第72回:雛人形・五月人形のふらここ。毎年早期に完売してしまう人気の秘密とは?

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本日のゲストは、株式会社ふらここ 代表取締役 原英洋さん。株式会社ふらここでは、オリジナルの雛人形、五月人形の製造販売を行っています。原さんに、事業内容や起業に至るストーリーを伺いました。

 

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「コンパクトサイズのお人形」

松本:現在どのような事業をされているのか、自己紹介をお願いします。

原:弊社では、雛人形と五月人形の製造販売を行っています。一般的には、製造と販売は完全に分離していて、職人が作ったものを人形専門店が仕入れ、自社の店舗でパーツを組み合わせて販売するというかたちですが、弊社の場合は、人形の企画から製造販売すべてを自社で行っております。

全国に約350社の人形専門店があるなかで、弊社の商品の特徴としましては、人形の顔が可愛らしい表情をしていることと、幼稚園の女の子の手のひらに乗るくらいのコンパクトサイズということです。

 

「時代のニーズをくみ取った商品設計」

松本:コンパクトサイズにした理由は何ですか?

原:一昔前であれば、節句用人形は祖父母が孫の成長を願い贈るものとされており、高価な人形を買ってあげたと示すためにも大きいものが好まれた傾向にあります。しかし、今は、核家族化が進み、飾る場所がマンションのような小さなスペースとなってきたことで、収納に便利な小さなものが好まれるようになりました。

 

また、購入決定権が祖父母から母親に移ったことで、昔ながらの凛々しくて強面の人形よりも、小さくて可愛いものを求められるようになったため、手のひらサイズで、明るいパステル調を基本として、子どもの成長を祝う若いお母さまに買っていただくための人形づくりをメインにしています。

お客さまのなかには、まず、女雛と男雛の親王飾りを購入し、翌年に三人官女、翌々年に五人飾りというふうに、年々パーツを増やして楽しむというファンの方もいらっしゃいます。

 

「市場がピークになるころには売り切れてしまう」

松本:一般的な雛人形はいつごろ売れていくのですか?

原:一般的には、お正月が過ぎてからお客さまが探し始めて、遅くとも2月半ばまでに購入されます。弊社では、11月から販売を始めるのですが、市場がピークになることには売り切れてしまうため、2月にはほぼ商品が残っていません。

そのため、2月ごろに初節句用の人形を探しに来られたお客さまのなかには、弊社の商品で欲しいと思った人形があっても売り切れているため、節句を1年先延ばしにしてまで、商品をお買い求めくださる方もいらっしゃいます。その背景としては、これまでは祖父母が孫の初節句を祝うことが大切とされてきた文化が、母親が納得したものを購入したいという流れに変わってきたことが考えられます。

 

「人形師の家系で育つ」

松本:これまでに至った、原さんのストーリーを教えてください。

原:祖父が明治時代に創業した、100年以上続く人形師の家系で育ち、生まれたときから人形に囲まれて生活していましたので、人形の良し悪しを見極める力は自然と養われてきたと思います。大学時代に語学の先生から、「いい文章を書くから、作家になりなさい」と言われたことがきっかけで、作家を目指しておりましたので、大学卒業後は出版社に入社しました。

 

「家業を継ぐも面白さは感じなかった」

松本:出版社は何年務めたのですが?

原:出版社に就職し、2年目に、父が他界したことで、私は家業の人間づくりを手伝うことになりましたが、当時、作っていた人形は伝統的な古めかしいものでしたので、そんなださい仕事はしたくないという思いでした。そして、作家を目指しており、まだ23歳という若さで夢半ばでしたので、人形づくりに面白さを感じることはできませんでした。

 

「肩書が付いたからには全力で」

松本:家業に入ってからは、まずどんな仕事をされたのですか?

原:ひとまず、母が社長を引き継ぎ、「いきなり人の上に立つな」という父の遺言の通り、私は倉庫で荷造りなどの下働きから始めました。その後、番頭から、「これから君が継ぐことになるのだから、きちんと役職を持ったほうがいい」と言われ、専務という肩書を与えられました。

肩書が付いた途端、ベテラン社員から仕事のやり方などのアドバイスを求められるようになったこともあり、自分なりに必死に経営について勉強するようになりました。セミナーなどに足を運び、7年半ほど勉強しましたが、20代では得た知識を実践するに至りませんでした。

 

「お客さまが望むものを作るには独立するしかない」

松本:独立はいつごろされたのですか?

原:実家には売り場があったので、お客さまからの声を直接聞ける機会がありました。お客さまと対話していくなかで、可愛くてコンパクトな人形が求められていると実感したので、「コンパクトサイズの人形を作れないか」と職人に相談したものの、「専務、お客さまに迎合するの?」と言われたことをはっきり覚えています。

「お客さまが望んでいるものを作ることは当たり前のことじゃないですか?」と話をするも、「それが迎合と言うんだよ」と反対され、ここにいては、お客さまが望んでいる人形は作れないと感じ、20年務めた家業を辞め、45歳のときに独立しました。

 

「生命保険を解約し、自宅を担保に入れた」

松本:開業資金はどうされたのですか?

原:母に独立意思を伝えると、後継者がいなくなるということで反対されましたが、どうせ失敗して戻ってくるだろうと、最終的に許可してもらいました。退職金は出なかったので、それまでの貯金と、生命保険を解約したお金、さらに、自宅を担保に入れて国民金融公庫からお金を借りて、合計2,000万円の元手で会社を設立しました。

 

「初年度の売り上げを作るために提灯を売った」

松本:起業後に大変だったことはありますか?

原:創業したのが4月で、9月決算だったので、雛人形の売り始めるのが11月となると、初年度の売上がゼロになってしまうことを金融機関に伝えると、それは困るということで、慌てて、お盆用の提灯を販売しました。まったくオリジナル性はないのですが、創業したての会社なので数字を作ってもらわないと困るということで販売し、なんとか1期目を乗り越え、2期目で雛人形200セット、その後、五月人形100セットを売りました。

 

「ブランドイメージを初めから固める」

松本:起業して最初に取り組んだことは何ですか?

原:資本金1,000万円をかけて、ホームページとカタログを制作し、「ふらここ」というブランドをしっかり育てていきました。残りの1,000万円で雛人形を200セット作り、その雛人形が売れた資金で五月人形を作っていったという流れです。

初年度から商品を完売することができたのですが、その要因としては、ホームページやカタログをしっかり作り、安心できる会社ということを伝えられた成果だと思います。創業当時は、雛人形と五月人形合わせて300セットでしたが、おかげさまで今では生産数、売上ともに12倍になっています。

 

「完全にオリジナルという強み」

松本:独立前と後で人形づくりの違いはありますか?

原:一般的な会社では、職人が作ったパーツを仕入れて、そのパーツを組み合わせて、お客さまに販売しているため、人形、飾り台、屏風、雛道具などのパーツは、実は違うメーカーです。組み合わせを変えることで人形店ごとにオリジナル性を出しているのですが、よく見ると、別の店で見たパーツだなと感じることもあり、本当にオリジナルかどうか、購入する側も迷ってしまいます。

また、値段も高く設定してあり、そこから値引きをして販売するということが主流ですので、お客さまはどこのお店が本当にお買い得なのか判断がつかない状態です。一方で、「ふらここ」では、人形が着ている衣装の布地から、すべて自社デザインというこだわりを持っており、ここまでオリジナル性が高い人形店は日本で弊社だけですので、お客さまも迷わず購入していただけると思います。

 

「伝統を変えるという苦しみ」

松本:これまでの人形づくりを変えるための苦労はありましたか?

原:伝統的な古めかしい人形から、可愛らしい人形づくりを職人さんに依頼するときは、抵抗の連続から始まりました。職人さんは、彫りが深い造形をしっかり作り上げることで技術を発揮することができると感じており、「ふらここ」の人形は子どもの顔で、卵に目鼻がついたような丸いかたちのため、作り甲斐がなかったと思います。

 

最初に依頼したときも、「こんな顔にしたら、人形の顔じゃなくなる」と断られましたが、彫りを取ってくれと、何度も何度も懲りずにお願いし続け、最後の最後で、「原さんの言うように作ってみたら、すごく可愛くなったよ」と言っていただくことができました。

伝統あるものを変えることは一筋縄ではいかず、抵抗からのスタートで苦しみましたが、職人さんとともに納得にいくものを作れたと思います。

 

「相手のプライドを認めることが大切」

松本:職人さんと話を進めるうえで大切にしたことはありますか?

原:自分の主張ばかり通そうとすると、反発し合いますので、まずは、職人さんのプライドを認めて、技術をいかに発揮できるか働きかけることを大切にしました。また、人形製造業は倒産や廃業も多い衰退産業であり、後継者不足と言われている業界ですが、弊社の売上が良ければ、職人さんへの依頼も増え、収入も上がるため、「こんなに売れるんだったら、後継者を育てるよ」という嬉しい声も聞きます。

職人さんと良好な関係を築くためには、まずは相手のプライドを認めて、職人さんが食べていけるように仕事を作っていくことを大切にしています。

 

「少子化ではあるが、ニーズはある」

松本:少子化によって、売上などに影響はありますか?

原:人形業界としては縮小していますが、市場に将来性がないかと言うとそうではないと考えています。少子化という現実は確かですが、それでも、出生数は100万人を割ったばかりです。これはどういうことかと言うと、全国の人形店を合計すると、1年で35万セットが提供されています。

つまり、100万人の子どもたちに対して、35万セットしか販売できておらず、残り65万人が雛人形や五月人形を購入していないということになります。弊社が今年提供した雛人形はわずか3,500セット、五月人形は1,000セットに対して、市場規模は100万と考えると、まだまだ可能性は十分あります。

 

「ターゲットを絞った商品づくり」

松本:商品を展開するうえで気を付けていることは何ですか?

原:節句用人形は、生まれた子どものためにお母さまが選び、出資元は祖父母なので、子どもやお母さんが喜び、おじいちゃんやおばあちゃんも納得するものを作ろうとしているのが人形業界ですが、これではターゲットが広すぎてまとまりませんので、弊社では、若いお母さまだけにターゲットを絞り、明確に商品展開できています。

 

お子さんが誕生して、すぐに節句を迎えるため、購入を考える時間が少なく、店員のセールストークで買わせたい商品を売ることができてしまうのが節句用人形販売の特徴だと思いますが、それでは、お客さまの本当のニーズを聞き出すことはできないので、ショールームでは販売行為は行わず、お客さまと接するだけの場所、お客さまに実物を見ていただくだけの場所ということをこだわっています。

お客さまと対話するということを目的としていますので、社員全員がショールームに立ち、要望を感じ取るということを大切にしています。

 

「自分勝手な思い込みで始めないこと」

松本:起業したいけども、どの分野に進もうか迷っている方へアドバイスをお願いします。

原:私は、とにかくお客さまの声にもとづいて、ものづくりを始めました。起業というものは思った通りにはならないので、自分勝手な思い込みで始めずに、実際に商品が売れるかを検証することが大切だと思います。

そして、起業後は、社員が集まらない、お金が足りないなど、様々な困難にぶつかると思いますが、諦めない限り可能性は続くので、諦めない精神力もポイントです。自分の能力が足りないのではないか、考えが間違っているのではないかと悩むこともあるかと思いますが、自分の気持ちを継続させていくことで成功が見えてくるはずです。

 

「ある程度の資金は準備して始める」

松本:スタート資金はどれくらい用意したほうがいいか、アドバイスはありますか?

原:商売によって違うと思いますが、物販であれば、3カ月分の在庫を持ちながら、ホームページやカタログの製作費、店舗代など、半分は自己資金で賄えるくらいの貯蓄を準備して、半分は金融機関から借りてもいいと思います。ある程度、資金の準備をして、思い付きで始めないことが重要です。

 

「文化を守り、次世代に継承させていく」

松本:今後の事業展開、仕事上での夢を教えてください。

原:私どもは、ビジネスでありながら、日本文化に根差した仕事をしていますので、雛祭りや端午の節句という伝統文化がなければ、ビジネスそのものが成立しない仕事です。そのため、文化を守り、後世に伝えていくことをとても大切に考えています。

文化を広めると同時に、文化を継承させていくための物販をしていく必要があると思いますので、普通にビジネスを成功させるということではなく、文化を守り、次世代に継承させていくためのビジネスを広げていきたいという夢があります。

 

「覚悟を持てば、可能性は無限」

松本:最後に、起業を考えている方へメッセージをお願いします。

原:起業して、自分の思いを実現させることは素晴らしく、多くの人に起業家になってほしいと思いますが、中途半端で生半可な気持ちでは成功できません。覚悟を持って起業に臨むことで、可能性は無限に広がりますので、頑張ってほしいと思います。

 

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起業におすすめな本/社長の「1冊」

蒼き狼

風の如く蹂躙せよ。嵐の如く略奪せよ。世界史上未曾有の英雄、成吉思汗即位八百年! 遊牧民の一部族の首長の子として生れた鉄木真=成吉思汗(テムジン=チンギスカン)は、他民族と激しい闘争をくり返しながら、やがて全蒙古を統一し、ヨーロッパにまで及ぶ遠征を企てる。

六十五歳で没するまで、ひたすら敵を求め、侵略と掠奪を続けた彼のあくなき征服欲はどこから来るのか?――アジアの生んだ一代の英雄が史上空前の大帝国を築き上げるまでの波瀾に満ちた生涯を描く雄編。
 

 

株式会社ふらここ 代表取締役 原 英洋

事業内容: 節句人形(雛人形、五月人形)販売

創業者 原英洋の祖父は、人間国宝である人形師 原 米洲、母は、女流人形作家の原 孝洲という人形師の家系で育ち、木目込み人形づくりを継承。

昭和60年3月、大学(慶応義塾大学経済学部)卒業後、出版社(集英社)に入社。
昭和62年1月、原 孝洲(五色株式会社)に入社。3月父他界。以後、専務取締役として21年に亘り原 孝洲の経営に従事。
平成20年4月、妹夫婦に後を託し、原 孝洲を辞職。辞職時の売上高5億5千万円(原 孝洲入社時3億円)。

【経営理念】
時代のニーズに調和した日本の伝統文化を提供することがもっとも大切な使命 

ふらここは、常に時代のニーズに調和した日本の伝統文化を提供することを、もっとも大切な使命とこころえています。

私たちは、お客様に心からお喜びいただくために、常により高品質で温もりを感じる商品とサービスを提供し続けることを約束します。ふらここがお客様にお届けするもの、それは、真心をこめた最高の商品とサービスを通して、お客様が実感する幸福感です。

株式会社ふらここ
http://www.furacoco.ne.jp/

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