第83回:「歴史×演劇×地域」をテーマに日本の未来を創造していくー劇団熱血天使

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本日のゲストは、日本志コミュニティ協会&劇団熱血天使 代表 菅沼萌恵さん。菅沼さんは「日本の未来を創造する」をコンセプトにした劇団熱血天使の劇団員です。菅沼さんに、事業内容や起業に至るストーリーを伺いました。

 

 

 

「歴史×演劇×地域」

松本:現在どのような事業を行っているのか、自己紹介をお願いします。

菅沼:日本志コミュニティ協会は、すべての人に志をという理念で活動しており、劇団熱血天使では歴史上の偉人と呼ばれる人たちを題材にした演劇を行っています。例えば、吉田松陰さんなど、教科書での説明が簡単に終わってしまうような人物にスポットを当て、実際に偉人が育った土地へ出向き、偉人に思いを馳せて脚本を作っています。

「歴史×演劇×地域」をテーマにして、演劇を通して地域を考え、そして、日本の未来を創造していく一助になれればという思いで活動しています。熱血天使という名前の由来は諸説ありますが、激しく生きた偉人たちの生涯を扱っているので「熱血」であり、その偉人たちは世の中を救ったということで「天使」、併せて「熱血天使」という言葉を使っています。

 

「演じる役に思いを馳せる」

松本:これまでどのような役を演じてきましたか?

菅沼:私たち熱血天使の劇団員は基本的に喋ることが専門で、本公演という大きな舞台のときは外部から客演さんをお呼びして、規模が大きい演劇に仕上げていきます。これまでで最も大きい講演だと、1,800人ほど来場いただき、小劇場と呼ばれている世界ではお客さんが入っているほうだと思います。私は熱血天使に所属して10年目で、これまでに24役ほどやらせていただき、中でもジャンヌダルクは大役でした。演じる役に思いを馳せることを大切にしているため、ジャンヌダルクを扱った演劇の際は、劇団員で10日間ほどフランスへ行き、ジャンヌダルクの史跡を巡りました。

 

「行政からの依頼もある」

松本:舞台の準備期間や予算、どのようなところから依頼が来るのか教えてください。

菅沼:舞台の準備期間は様々で、短期間もあれば、1年以上かけて準備するものもあります。先日、国分寺市の再開発で駅直結のホールが完成し、そこで国分寺の歴史を扱ったイベントを実施してほしいと依頼がありました。歴史研究家の方が手掛けた脚本を私と座長の2人芝居で演じるというもので、国分寺に伝わる悲恋の遊女の話などをやらせていただきました。このようの行政からのご依頼はある程度の予算をいただけるのですが、自主興行となるとお金も時間もかかる傾向にあります。

 

「創業者の理念を演劇に」

松本:演劇は企業にも活かせるのですか?

菅沼:新入社員研修にも演劇を活かしたいと考えていて、社団法人化して企業展開も夢見ています。新入社員研修というと、創業者の理念が書かれた本を渡されて読むということが一般的ですが、文字が羅列しているだけで読むことが辛いと感じている方も多いと思います。そこで、創業者の想いを演劇にすることで、研修に面白みが出るのではないかと期待しています。

 

「書籍だけではなく、五感で感じる」

松本:演じる際に工夫していることはありますか?

菅沼:実際に演じる役が育った土地に足を運ぶことを大切にしています。書物にだいたいのことは書かれていますが、本に書かれていない裏の顔まで知ることで演技にも深みが出ると思っています。偉人と称えられる人物であっても、裏であった苦労を役に出し切ることで、大学受験や仕事での悩みを抱えている方が舞台を見たときに、苦労したことに共感してくださいます。多くの舞台やメディアでは、偉人の成功ストーリーはよく見かけますが、まだ光が当たっていないエピソードも盛り込んでいます。

 

「人間観察は職業病」

松本:演じているときのお客さんの反応はどうですか?

菅沼:演出の好みや役者の力不足などもありますが、お客様全員が楽しいと思ってもらえることは難しいと思います。お客様が飽きているなと感じるときもありますが、私の出番になり、一生懸命に演技をして、お客様の興味をもう一度惹きつけることにやりがいを感じています。人を惹きつけられるリアルな演技をするために人間観察をしており、例えば、電車で眉間にしわを寄せて形態を見ている方がいたら、嫌なメールでも来たのかな?など、何があったのかと想像してしまいます。

 

「才能を開花するためには耳を鍛える」

松本:お芝居には向き不向きはあるのですか?

菅沼:私は高校で非常勤の演劇講師や、芸能事務所で演出を指導する仕事をやっていたこともあり、これから役者を目指す方を見てきました。面接などをさせていただくなかで、素材を活かしたほうが伸びるなど様々な生徒さんがいましたが、センスのある子たちは「耳がいい」ということが共通しています。耳がいいというのは聴力ではなく、自分の音に対する感受性をしっかり持っているということで、人の話を聞いて理解することです。耳で話を聞けていない人は、自分勝手に物事を解釈してしまいますが、耳がいい人は駄目なところを噛み砕いて理解してすぐに変えることができます。周りの音を聞くだけでなく、自分が発する音にも敏感になることで、改善点を見つけ出しやすくなると思います。

 

「プレゼン能力と演じる力は似ている」

松本:演じる力を身に付けることはビジネスにも活かせますか?

菅沼:起業家さんのプレゼン大会のコーチングもさせていただいたことがあります。起業家としての想いを語るとき、原稿通りに喋ってしまうと言葉に深みが出ないので、なるべく内側から出る自分の言葉で喋るようにアドバイスします。話し方だけではなく、ボディランゲージなどの立ち振る舞いや、一番後ろの席のお客様にも想いが伝わるように、会場入りしたときは客席の一番後ろに行くよう伝えています。また、女性の武器は共感力ですので、共感を呼ぶ喋り方をするために、普段何気なくお喋りするときの笑顔や言葉の強さをプレゼンでも活かす訓練をしたりなど、プレゼンは演じることと同じですので、演劇経験を活かして指導させていただいています。

 

「衝撃!私にはお姉ちゃんがいた」

松本:これまでの菅沼さんのストーリーを教えてください。

菅沼:演劇が好きでマグロのように止まらずに舞台を重ねてきましたが、劇団員として8年目を迎えた29歳のころ、このままの人生で良いのか行き詰まりを感じました。劇団でもリーダー的ポジションにいたので、常にせわしなく動く体に疲れを感じ、10日間休みをいただき、日光の山にある宿で過ごすことになり、朝から夕方まで川で遊んだり、山登りをしたり、瞑想したり、ぼーっと過ごし、あるとき昼食を食べていたら、突然、両親が現れました。大事な話があると言われ、弟たちが事故にでも遭ったんじゃないかと心配していたところ、「実は萌ちゃんには二つ上のお姉ちゃんがいる…」と思いもよらぬカミングアウトに「えー?」と叫び、日光の山にやまびこが返ってきたことを覚えています。

話を聞くと、私が0歳のころに今のお父さんと再婚し、お姉ちゃんは本当のお父さんが引き取って、29年間黙っていたが、遺産相続の関係で私の手続きが必要となり本当のことを話すことになったということです。育ての父親からは29年間一度も本当のお父さんではないと感じたことはなかったので、事実を知ったときは悲しみではなく、ありがたさを感じました。お父さんの血が繋がっていないということは、祖父も祖母も他人のはずなのに、めいいっぱい可愛がってもらったことを覚えているので、世の中にはこんなに良いこともあるんだと感激しました。

このカミングアウト事件により、行き詰まっていた人生のモヤモヤが解消され、世の中に対して自分がやれること、そして、劇団として社会貢献できることはないか考えた結果、「歴史×演劇×地域」というテーマが誕生しました。

 

「ミュージカルに生きる元気を貰った」

松本:小さいころからミュージカルはやっていたのですか?

菅沼:母が伝統芸能の能をやっていたこともあり、ありとあらゆる習い事をさせてもらったのですが、残ったのがミュージカルで、中高はバレーボールをやりながら、地域のミュージカル団体に所属していました。私が所属したころは70人ほどの女の子がいて、私は下のクラスからスタートし、中学生までは芽も出なかったのですが、嫌なことがあってもミュージカルに生きる元気を貰っていたので続けられました。粘り強く続けていると、先生に認めていただき、最後はリーダークラスで、後輩たちをまとめる立場に就くことができました。

 

「才能がなくても好きという気持ちの強さ」

松本:お芝居の面白さはどこに感じますか?

菅沼:子どものころは妖精など別のものになれることが楽しかったです。今は実在した人物を自分の体を通して、その人物が生きていた土地で演じると何とも言えないリアリティを感じることに凄みを感じています。映画を観たり、本を読むことよりも、日本の歴史が自分のなかに繋がる瞬間が楽しいです。小さいころは演技の才能はなく、泣きながら練習していましたが、好きだから続けることができ、受験シーズンも友人はミュージカルを休むなか、私は一度も休むことなく練習に参加しました。受験もすぐにミュージカルに集中できるように、一般ではなく推薦にして、大好きなミュージカルを続けるために必死でした。また、ミュージカルを一生懸命やっていても勉強が未熟ではミュージカルに失礼だと思っていたので、ミュージカルも勉強も全力投球の日々でした。

 

「小学生のころから歴史好き」

松本:小さいころから歴史は好きだったのですか?

菅沼:小学校のころから歴史が好きで、役者の道の他に、歴史の先生という道も考えていて、教師を目指す人が多く進学する高校へ行きました。社会の自主学習では、古代文明が好きで、エジプト文明にまつわるパンの歴史などを調べて、実際にパン屋に行くということもしており、そのときから現場主義だったと思います。

 

「主宰の熱意に圧倒されて劇団を立ち上げる」

松本:劇団熱血天使を立ち上げた経緯を教えてください。

菅沼:専門学校で所属事務所を決めるドラフトオーディションが開催され、内定をいただいた事務所もあったのですが、心から行きたいと思える事務所がなく、卒業後しばらくはフリーで活動していました。ある日、友人から、「明治大学の友達が脚本を舞台化したいと言っているんだけど協力してほしい」と言われて出会った彼が今の主宰となる人物です。舞台化したあと、「萌さんと劇団にしたいんですけど…」と言ってもらったのですが、彼も学生で知識もお金もなかったこともあり猛反対しました。すると、「劇団四季も学生団体から始まっているんです。何もないからということはやらない理由にならない。何があったらやってくれますか?」と熱烈アピールされ、「前金があれば…」と話したところ、「僕がお金を用意して脚本を書くので、萌さんは他をやってください」と圧倒されて、よく分からないまま劇団熱血天使を立ち上げました。

 

「役者が食べていけない理由を研究した」

松本:役者は食べていくことが大変ですか?

菅沼:19歳のころ、演技が上手な40歳くらいの先輩がいたのですが、稽古後に「これからピザ屋のバイトだ」と言って、稽古場を出て行く光景にショックを受け、自分はああならないと心に決めました。知り合いに経営者が多かったので、19歳から23歳までの間、「なぜ役者は食べられないのか」をテーマにリサーチしたところ、夢を現実化するまでの思考力が足りないからだと気付きました。何万人のなかから選ばれたというシンデレラストーリーでないかぎり、役者も個人事業主と同じで、自分をマネジメントしていかなければ成功しないと思います。世の中の役に立っていないから、ありがとうの対価が貰えず、必要とされていないので、自分の役目をしっかり探すことが食べていく秘訣だと感じます。

 

「人から喜ばれたことを自覚する」

松本:好きなことをビジネスにしたいけど、何をすべきか決まっていない方へアドバイスはありますか?

菅沼:自分が当たり前にしていることで人から喜ばれることを探してほしいです。無意識でやっていることこそ才能が眠っています。私もプレゼンなどの指導ができると思っていませんでしたが、コーチングの仕事には役者の経験が活かせることに気付き、自分が何気なくやってきた演技というなかに仕事を見つけられたと思っています。誰かの悩みを自分の持っている能力で解決できないかを探るためにも、まずは周りに興味を持つことも大切です。

 

「大仏建立の劇を大仏の前でやりたい」

松本:今後の事業展開、仕事やプライベートでの夢はありますか?

菅沼:以前、奈良の大仏建立の話を演じたことがあるのですが、東大寺で実際に大仏を前にして演劇をしたいという夢があります。それはなぜかと言うと、修学旅行で大仏見学をしても、「大きいな~」という感想で終わってしまい、なぜ大仏が建てられたのかという事実を知らないままということが多いからです。1300年前、大地震や飢饉が起こり、世の平和を願い、国民の半分以上が参加し、あの大きな大仏を建てたという話を若い世代に伝えていくためにも、大仏様の前で奉納というかたちで演劇ができたらいいなと思っています。

 

「自分は何者か考える」

松本:最後に起業を考えている方へメッセージをお願いします。

菅沼:自分のなかにある情熱の源泉を探すためには、自分の嫌な面も引き受ける覚悟が必要で、キラキラした感情だけでは好きを仕事にできません。大成功された方を見ていると、必ず自分と向き合う時間をしっかり持っていますので、自分は何者かを考え、好きを仕事にしてほしいと思います。

 

 

日本志コミュニティ協会
劇団熱血天使 

代表 菅沼萌恵
埼玉県出身。

1997年~2005年 川口少年少女ミュージカル団在籍。松山雅彦氏に師事し、在籍中にイギリスのThe Unknown Theater Companyとの合同公演など多数のミュージカルに出演。演劇を中心に学んだ後、フリーランス期間を経て、2008年劇団熱血天使の旗揚げに参加。

以後、熱血天使の全公演、イベントの企画を行う。一方で、女性の為のキャリアアップスクールIRISを一期生として卒業。経営、マネジメントにも興味を持ち、積極的にセミナーや講演会にも参加。演出や企画面に生かしている。

2011年、高杉晋作を主人公にした「三千世界の彼方」から熱血天使の本公演の演出も担当するようになる。2014年のInternational Music Theater主催の公演『ジャンヌダルク』では主演を務め、各方面から好評を得る。なお、女優や演出家を続ける傍ら、女性がもっとイキイキと輝きながら自分を活かせるようにと、コーチング講座「ライフミッションセミナー」講師としても活躍。2015年からは、役者が実践しているメソッドが現代の多くの「自信の持てない」若者に役立つと、オリジナルのメソッドでのWSも開催し、各方面でファンを増やしている。 


菅沼萌恵さんの情報:
https://www.facebook.com/moe.suganuma1

https://ameblo.jp/moe-full-bloom55/

 

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