第69回:肖像写真家 タツ・オザワ/写真で人生を変える『成功へと導く肖像写真』

IDEAストーリー

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本日のIDEAストーリー。ゲストは、肖像写真家 タツ・オザワさん。タツ・オザワさんは、理想の自分の肖像画を撮り続けている写真家です。タツさんに、事業内容や起業に至るストーリーを伺いました。

 

 

 

「未来を写す肖像写真家」

松本:現在どのような事業をされているのか、自己紹介をお願いします。

タツ:私は肖像写真家というジャンルの仕事を25年間しており、経営者をはじめ、弁護士、公認会計士、文化人の方などの撮影を行ってきました。写真という技術は180年ほど前にできたもので、フィルムから始まり、今は、iPhoneなどで気軽に写真を撮ることができるようになりました。

写真と言うと、現在を撮影し、記録しておくものですが、私は未来という観点で撮影しています。例えば、経営者の方であれば、1年後に売上をいくらにしたいなど、将来の目標を伺ったうえで、人物のなかに翻訳し、写真として表現するということを仕事としています。

 

「顔出ししている企業は業績も良い」

松本:ビジネスにおいて、写真の重要性はありますか?

タツ:あるファンドマネージャーの研究によると、業績が良い上場企業は、ホームページで社長の顔を公開しており、逆に、顔写真を掲載していない企業は不祥事を起こす確率が高い企業であるという結果が出ています。

私も銀行員時代に融資を担当していた経験から分かるのですが、企業の本質は、財務諸表などにも表れますが、事務所に伺った際に、傘立ては綺麗に整頓されているか、出前の食器を返却するときに綺麗に返しているか、トイレは清潔かなど、細かなところに本当の企業の本質は現れると思います。そのなかでも、ホームページに掲載する社長やスタッフの顔写真はどのようなものにするかも重要です。

 

「最終的には写真で選ばれる」

松本:ホームページには、どのような写真を掲載すべきですか?

タツ:例えば、弁護士の場合、以前は、顔写真はホームページに載せないことが多かったのですが、ネット社会になり、お客様はホームページを見て、依頼先を決める時代になりました。数ある弁護士事務所のホームページを比較してみると、それぞれの弁護士事務所の紹介文はほぼ同じことが記載されており、取得している資格も同じだった場合、最終的な決め手となるのは、写真です。

お客様は、弁護士やスタッフが証明写真のように無表情のものよりも、ニコニコと穏やかなで優しそうな写真を掲載している弁護士事務所を選ぶはずです。このように、効果的な写真を掲載することで、集客などにも繋がりますので、私は写真を使って、売上アップなどのお手伝いをさせていただいております。

 

「写真を変えるだけで集客が10倍」

松本:名刺に写真を入れることも効果的ですか?

タツ:実は、以前、NHKさんで放送されたことがあるのですが、名刺の写真を変えて、9カ月後に集客が10倍、売上が6倍になった例もありますので、仕事用の写真を撮り、チラシなどの媒体の写真を差し替えるだけで集客に効果が出る可能性は十分にあります。写真を正しく使用すると、営業などの売り込みをしなくても、紹介をいただくことができるという戦略に繋げることも可能です。

 

「理想の自分を撮影する」

松本:理想の自分を撮影するとはどういうことですか?

タツ:1年後こうなりたいと思っても、今の年商がこのくらいだから、せいぜいこのくらいにしかならないと思ったり、ビジネス書を出版したいけど、今まで書いたこともないから出せるわけないと思ったり、自分に制限をかけている人も多いですが、その制限をすべて取っ払って、本当はどうなりたいのか考えることが重要です。撮影される方が、現状の問題点を洗い出し、どのような目標を持って、撮影した写真をどういうかたちで活用するということまで事細かく教えていただけると、ピンポイントで理想の自分を撮影することが可能です。

 

「思いは顔に表れる」

松本:目標を持って撮影した写真は面接などにも活かせますか?

タツ:アメリカの研究によると、ホームページに掲載された社長の顔を見ただけで、会社の売上や業績が分かったり、営業マンの名刺の顔写真を見て、良い営業マンか、駄目な営業マンか分かるという研究結果もあります。

私の例ですが、「常に30人のヘッドハンターが行列を作るビジネスマンになりたい」という目標を持ち、撮影させていただいたお客様がいます。撮影した写真をLinkedIn(リンクトイン)という人材サイトに掲載したところ、二度の転職を経て、理想通りの年収になり、すでに勤めているにも関わらず、ヘッドハンターの数が切れないという、目標通りの人生を歩んでいる方もおられます。人事部の方は顔写真で性格が分かる方が多いですので、ピンポイントで響く写真を作れば、面接まで行きつくことは可能だと思います。

 

「撮り方によって、未来の自分が撮れる」

松本:未来の自分が撮れるとはどういうことですか?

タツ:鏡で見ている自分は左右反転していて、ある意味では、自分ではない自分を見ていると言えます。つまり、自分が思っている自分と反対の顔を見ているということです。例えば、売上がどんどん上がる経営者に思われたいという社長さんの場合、そう思われるような撮り方にすることで、思い描く未来の自分を撮影することは可能です。

 

「見た目は10割」

松本:撮影するときのこだわりはありますか?

タツ:例えば、経営者の方の撮影の場合、会社の事業内容や、将来の方向性、それが現代の経済環境や人口増減と比較してどうかというところまで考えて、撮影に臨みます。的外れな理想を表現した写真となっては意味がないですので、経営者とともに理想を追求して撮影するため、写真家ですが、経営コンサルに近いこともやっています。

例えば、「今の業績は悪いけど、将来は良くしたい」という文章があった場合、読んだ人は、本当に業績が良くなるのか疑問を持ちますが、写真の場合は、見た通りに理解してもらえますので、ファイトがあって、意志が強そうな写真を見れば、その通りの人だと思われます。人は見た目が9割と言いますが、私は見た目が10割だと思いますので、ビジネスにおいて、いかに効果的な写真を使うかが重要になってきます。

 

「見た瞬間に印象が決まる」

松本:駄目な写真の例はありますか?

タツ:証明写真やパスポートのような、無表情の写真はビジネスにおいて使用しないほうがいいと思います。メラビアンの法則は、言葉が7%、声が38%、顔が55%ですので、声と顔を足して93%になるため、このことから、人は見た目が9割と言われています。

これはアメリカの心理学者が見つけた数字であり、日本では顔から伝わる印象はもっと高いとも言われていますので、名刺やホームページに掲載する写真がいかに重要かが分かります。ある実験では、写真を見て、友達になりたいかなりたくないかは、0.5秒で判断されるという結果も出ていますので、ビジネスにおいても、初めに買いたいなと思わせることでうまく回転していくと思います。

 

「理想の自分は更新されていく」

松本:理想の自分の写真が撮れたら、内面も変化していくのですか?

タツ:納品された写真を見ると、現在の自分と理想の自分の写真のギャップに違和感を持ち、理想の自分ではなく、自分らしい写真をホームページに掲載したいという方もいらっしゃいますが、そうすると、現状の自分のままで何も改善することができません。

新しい結果を出すためには、新しい自分にならないと結果は出ませんので、理想の自分を表現することが大切です。理想の自分を定期的に見ていくと、その自分に近づき、外見も大きく変わり、気が付いたころには理想の自分を通り越して、新しい未来の自分を撮り直すという方もいらっしゃいます。

 

「アメリカで写真を学ぶ」

松本:肖像写真家として25年やってきたなかで学んだことはありますか?

タツ:私は、写真を始めたころ、等身大の写真を世界で初めて制作したアメリカのスタジオで働いていたことがあります。富裕層の方が、1枚100万円以上する肖像画を購入していく様子を見ても、最初は、何のために購入するのか分かりませんでした。

 

しかし、最近、等身大の写真を作る意味が分かってきました。2015年に父が他界し、その日を境に、母の体調が悪化し、化粧もしなくなり、髪もパーマをかけなくなり、体重も減っていきました。転んで怪我して以来、電動ベッドになり、ついには、外出しなくなってしまい、何か回復に向かう良い方法はないか考えました。私は写真のパワーを知っていましたので、綺麗にした母の写真を撮り、等身大に印刷し、額装してプレゼントすることを毎月始めました。

毎月、等身大に額装した写真が増えていき、常に3枚ほどは見える状態にしていたところ、1カ月後、それを見続けた母は、フランス料理のフルコースを1人で完食するほど体力も戻り、筋トレまで始めて、別人のようになったという出来事がありました。人間の細胞は6カ月で生まれ変わると言いますが、理想の自分が写る写真を毎日見ることで、そこからエネルギーを貰って、元気になり、精神的にも自立できるという、写真の凄さを学びました。

 

「未来の自分を受け入れると、急成長できる」

松本:目標は紙に書き出したほうがいいと言いますが、それではイメージがつきにくいですか?

タツ:ハーバードのビジネススクールの卒業生に、「目標は紙に書きましたか?」というアンケートを取ったところ、3%が書いた、13%は書かなかった、残りの84%は目標を考えなかったと回答し、その後、10年間の追跡調査をしたところ、3%の人は他よりも年収が10倍あったという結果が出ています。

ハーバード以外でも、いろんな大学で同じような結果が出たことから、目標は紙に書いたほうがいいと言われるようになりました。しかし、文字なので、目標が浸透するまでに時間がかかってしまい、今のビジネスの速い流れのなかでは間に合いません。そこで、私のセミナーでは、1年後の理想の自分を紙に書いてもらうこと以外にも、写真を使った目標設定の方法も伝えています。今の自分と未来の自分の違いを受け止めることで、急成長できると思います。

 

「アメリカ留学で写真の魅力を知る」

松本:現在に至った、タツさんのストーリーを教えてください。

タツ:小中高はスポーツが好きで、小学校では野球とサッカー、中高はゴルフをやっていました。好きなことをやりなさいという家庭の教育方針だったため、学校にはゴルフ部はなかったのですが、ゴルフ場に行き、練習していました。

 

しかし、ゴルフの才能がないと気付き、ゴルフは趣味でやろうと決めて、法律に興味があったので、大学では法律を勉強しましたが、法律家にも向いていないことが分かり、就職先は銀行員に決めました。入社5年目ぐらいのころ、アメリカのロースクールに留学し、法律事務所で実習弁護士として研修する機会があり、そこで、指導員の先生がカリフォルニア出身で、西海岸の素晴らしい風景写真を飾っていたものを見て、写真がアートになるんだと感じました。

私も素敵な写真を撮りたいと思い、最新のカメラを持って、同じ場所に行き撮影したものの、綺麗に撮影できなかったことで、どうやれば綺麗に写せるのか興味を持ち、写真の世界に惹き込まれていきました。

 

「雲のなかから肖像写真家になるとひらめいた」

松本:もともとクリエイティブなことは好きだったのですか?

タツ:小さいころから絵が好きで、お小遣いで油絵のセットを買って、油絵を描いていました。父の趣味が美の追求ということで、家にも絵や彫刻が飾ってあり、幼稚園に入る前から美術館にも連れていってもらい、本物を見る大切さを教えてもらいました。

 

34歳のころ、子供が生まれて、このまま銀行員を続けるか、新しいことに挑戦するか迷っていたころ、空の雲を見ていたら、「肖像写真家になる」とひらめき、奥さんに「銀行員を辞めて、肖像写真家になろうと思う」と相談したところ、「やったら」と背中を押してくれました。当時は、子供の写真を撮るくらいだったので、知識はまったくなかったのですが、英語は話せたので、アメリカの写真専門の大学にエントリーしてみたところ、合格し、銀行を辞めて、家族全員でアメリカに引っ越しました。

大学は3年で卒業し、等身大写真を作っている、アメリカのスタジオに就職したのですが、いきなり制作責任者を任され、ベテランの職人さんからの信頼を得るのに1年ほどかかり、大変な思いもしました。

 

「肖像画、イコール、理想の自分」

松本:日本にはいつ帰国したのですか?

タツ:アメリカで7年ほど修行したあと、2001年に帰国し、独立しました。アメリカのスタジオでは、1枚100万円以上する写真を10枚購入するお客様もいて、一度に1,000万円の売り上げが立つ様子を目の当たりにしてきたので、写真家が大変な仕事だとは思っていませんでしたが、独立当初は人脈もなく、最初は、自分の作品集を作り、知人に紹介することから始めました。写真は、大学やスタジオで学び、アメリカでも美術館に通い、背景やポージングなどを研究していましたし、肖像画、イコール、理想の自分を撮影するという技術は最初から持ち合わせていました。

 

「お客様の問題を解決したいという気持ちになり、軌道に乗った」

松本:軌道に乗ったきっかけはありますか?

タツ:アメリカのスタジオ時代は、お客様からどんどん依頼が舞い込んでいた状態だったため、起業したばかりのころは、日本でも、良い商品を見せると、自動的に売れていくと思っていました。しかし、実際は、同じクオリティの写真でも売れず、どうやったら売れるか考えました。良い商品ということをアピールするのではなく、お客様の問題を解決してあげることで相手に響くことが分かり、ビジネスを良くするための写真の活用方法を提案するようになってから、軌道に乗ってきました。

 

「縛られた思考を拡大する」

松本:これから起業したいけども、どの分野で起業しようか迷っている方へアドバイスをお願いします。

タツ:まずは、自分のキャリアや、その延長線上で起業を考えるべきだという制約を取り払うことが大事です。NHKで放送されたのですが、人間の脳はボーっとしているとひらめくということで、ノーベル賞受賞者も、お風呂に入って、のんびりしているときにアイデアをひらめいたと言っていました。

忙しく、普段ボーっとする時間がない方は、できるだけ遠くに旅行して、地平線や水平線を見ることで、自分の縛られた思考が拡大していきます。起業と言っても、仕事ですから、楽というわけではなく、常に様々なことを乗り越えていかなければいけませんので、本当にやりたいことを見つけてほしいと思います。

 

「リスクは大きいほど、大きな結果が返ってくる」

松本:最初の資金はどのくらい用意すべきですか?

タツ:スタート資金はあまり考えなくてもいいと思います。資金がこれだけしかないから辞めようと思うのではなく、リスクは大きければ大きいほど、大きな結果が返ってきますので、小さくやろうとせずに、資金は少ないけど、ドンと頑張ろうと思うと、必死になるはずです。そういう必死さがないと起業しても難しいと思います。

 

「未常識という発想」

松本:最後に、今後の事業展開、仕事上での夢を教えてください。

タツ:写真は現在や過去のものというイメージがありますが、未来の写真もあるという認識を世界中に広めたいと思っています。起業して、10年後に残っている企業は少ないと言われるなかで、写真をビジネスに活用して、大きな成果を上げるということに役立ててほしいです。

 

また、2007年に生まれた子供が107歳になる割合は50%以上と言われるように、人生100年時代は必ず訪れますので、素敵な理想の自分を撮影し、写真を通じて健康を手に入れ、健康寿命が延びていき、高齢者の方が社会で活躍できる国を作っていきたいとも考えています。

今は常識ではないが、将来は常識になるであろうという、「未常識」という言葉があります。10年前のiPhoneが販売された当初は、一部の人にしか使用されないと思われていましたが、今では当たり前のツールとなりました。このように、現実にとらわれずに、未来のことを自由に発想することで、起業も楽しくなると思います。

 

 

起業におすすめな本/社長の「1冊」

職業としての小説家 

「村上春樹」は小説家としてどう歩んで来たか―作家デビューから現在までの軌跡、長編小説の書き方や文章を書き続ける姿勢などを、著者自身が豊富な具体例とエピソードを交えて語り尽くす。文学賞についてオリジナリティーとは何か、学校について、海外で翻訳されること、河合隼雄氏との出会い…読者の心の壁に新しい窓を開け、新鮮な空気を吹き込んできた作家の稀有な一冊。

 

 

肖像写真家 タツ・オザワ

立教大学法学部を卒業後、三井銀行(現・三井住友銀行)に入行。
 丸の内支店時代に、海外大学院留学生試験に合格。アメリカのロースクールに企業留学し、首都ワシントンのベーカー&マッケンジー法律事務所にサマー・アソシエイトとして勤務。
そのとき、一枚の写真と出会い、写真の魅力に取りつかれる。

帰国後、経済調査部、国際審査部に勤務。34歳で一念発起して銀行を退行し、肖像写真家になるべく、アメリカのブルックス写真大学に留学。
 歴代の著名人の存在感を今に伝えている『肖像写真』を本格的に学ぶ。

ポートレート奨学金を獲得して肖像学部を首席で卒業後、世界的に有名なアメリカのポートレート・スタジオ「スタジオ・チェリス」に日本人ではじめて採用される。
ハリウッドスターから経営者に至まで各界著名人、富裕層の方々の撮影を中心に、
 肖像写真家、制作責任者としてハイエンドな肖像写真の制作全般に携わる。

2001年に帰国。肖像写真家として、日本での活動を開始する。2003年、アートコーポレーション創業者の寺田千代乃社長の肖像写真が、英国フィナンシャル・タイムズに掲載され、世界140ヶ国160万人の読者の目に触れる。2004年、英国フィナンシャル・タイムズが、福井俊彦日銀総裁を外国メディアとして世界ではじめて単独インタビューする際、写真家に指名される。福井俊彦日銀総裁の肖像写真は、2日間にわたり全世界で掲載される。その後、さまざまな分野のリーダーの肖像写真を撮影し、2014年、富士フイルム創立80周年広告に古森重隆会長・CEOの肖像写真が掲載される。
アメリカ時代から、著名人や富裕層の写真撮影を続けていくうちに、
いわゆる「成功者」の「肖像写真」と一般の「写真」の"違い"に注目するようになる。

その"違い"を体系化し、「肖像写真」が人生に及ぼす影響について、独自の理論を構築。

その理論と独自の撮影スタイルがNHKの目にとまり、
 「メッセージは顔に託せ」「顔で売り込め」等のタイトルで、全国に放映される。
その放映が反響を呼び、英訳されて海外でも広く放送される。

現在は『成功へと導く肖像写真』をコンセプトに、個人や企業の価値を高める写真を制作。
 幅広い客層から絶大な支持を得ている。

肖像写真家 タツ・オザワ
http://www.tatsuozawa.com/

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