第57回:高齢者に特化した人材派遣事業。高齢者が活き活きと働ける社会環境づくりを目指す
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本日のゲストは、株式会社高齢社、最高顧問、上田研二さん。株式会社高齢社では、高齢者の方に特化した人材派遣事業を行っています。最高顧問を務める上田さんに、事業内容や起業に至るまでのストーリーを伺いました。
「採用資格は60歳以上75歳未満」
松本:現在どのような事業を行っているのか、自己紹介をお願いします。
上田:弊社では、登録社員の入社資格を60歳以上75歳未満の健康な人とし、高齢者に特化した人材派遣事業を行っています。会社を始めたきっかけとしては、厚生労働大臣の講演会に行ったとき、少子高齢化の時代が来るということを知り、高齢者に特化したビジネスがこれから重要になってくると思い、定年を迎えた高齢者を対象として人材派遣事業の会社を立ち上げました。
「生産労働人口の減少をカバーする」
松本:会社名の由来を教えてください。
上田:労働の中心を担う、15歳以上65歳未満の人口層である生産労働人口が毎年減ってきている状況で、日本の労働を誰がカバーするのかと考えたとき、女性、老人、外国人、ロボット、これら四つの分野でカバーできるのではないかと思いました。そのなかで、私は老人という分野を活かそうと考え、お年寄りでも健康なうちは活躍できる場を提供しようということで、高齢社を立ち上げました。会社名は、なるべく分かりやすい名前がいいということ、その名の通り、高齢者が活躍する会社ということで、高齢社としています。
「メディアをうまく使った広報戦略」
松本:起業当初、工夫されたことはありますか?
上田:人材派遣事業を始めるには、人を集めるために、莫大な広告宣伝費がかかりますが、資金は1円も使わないと決めていたので、どうすれば、メディアに取り上げてもらえるか考えました。起業当初、「日経ビジネス」の関係者がよく出入りしている寿司屋があり、そこに私も通い、そこで知り合った方が「僕の同期が日経ビジネスの副編集長をしている」ということで、紹介していただき、高齢社の特集を雑誌で組んでいただきました。その後、高齢者を活用するという取り組みが面白いということで、改めて、弊社だけで特集を組んでもらうなどし、それをきっかけとして、テレビ局などからも取材があり、広告宣伝費を使わなくても、大きな反響を生み出すことができました。
「出向先の経営を立て直した」
松本:起業までのストーリーを教えてください。
上田:高校卒業後、東京ガスに検針員として入社しました。その後、東京ガスの子会社である、ガスターという給湯器メーカーが、赤字を17億8800万円抱えており、そこの経営を立て直すべく、営業本部長として出向しました。東京ガスから、どんな人材が出向に行っても、その会社を立て直すことができなかったのですが、私が出向し、5年ほどで累積赤字も消すことができました。
「人を大事にすることで会社は活きる」
松本:潰れかけた会社を再建したコツはありますか?
上田:高齢社を創業する時に社長として在籍していた、東京器工という会社がありますが、経営難に陥り、一度潰れかけていました。親会社となる東京ガスとしても、経営も不調だし、もう潰してしまおうという話になっていたのですが、再建したいという気持ちになり、私が東京器工の社長として任されることになりました。再建できたコツは、とにかく人を大事にすることです。社長に就任したとき、社員は120人ほどいたのですが、すべての現場に出向き、社員全員の名前と顔が一致するまで、一人ひとりとコミュニケーションを取りました。そうすることで、社員からの信頼も得ることができ、仕事に前向きに取り組む社員が増え、再建に繋がったと思います。
「定年制のない社会」
松本:高齢社はどういう思いで作ったのですか?
上田:定年後、時間に余裕がある働き手が活躍できる場を提供したいということで作りました。弊社では、60歳から採用できますが、最近は、60歳で退職した後、嘱託で再雇用する会社も増えています。そのため、実際に、弊社に登録いただく方は65歳以上が多くなっています。私は定年制のない社会を作りたいと思っていて、働き手が自らの意思で定年する時期を決めることがいいと思っています。
「再建のほうが楽」
松本:会社を新規で立ち上げることと、再建することはどちらが楽ですか?
上田:再建のほうが楽です。新規開業というと、人材も資金も何もない状態からスタートしますが、再建のほうは、借金はありますが、社員はいるし、顧客など関係者とのパイプもあります。悪いところを直せば、必ず売上は伸びてくると思いますので、再建するほうが私は楽だと思います。
「働く、学ぶ、遊ぶ」
松本:将来の夢を教えてください。
上田:将来は、働く場、学ぶ場、遊ぶ場、この三つの場所が一度で楽しめる空間を作りたいと思っており、高齢者の方が積極的に外出できる場所を提供したいという夢があります。私自身、パーキンソン病という難病を抱えていますが、病気だからと言って、家に引きこもってしまうと、元気がなくなっていくばかりですので、積極的に行動することを心がけています。病気になった当初は、家族からは無理しないほうがいいと言われていましたが、最近では、「お父さんは働かせておいたほうが元気だ」と言われるようになりました。夢を持って、新しいことを考えることで、自分自身も元気になっていると感じています。
「とにかくコミュニケーションが大事」
松本:これから起業を考えている方へメッセージをお願いします。
上田:常に夢を持つこと、いかなる苦難にも負けず、苦難を愛して、やるべきことをやれば、必ず道は開けると思います。そして、何よりもコミュニケーションが大事で、顔コミュ、電コミュ、手紙コミュ、メールコミュという四つのコミュニケーションパターンが重要だと考えています。例えば、私がよく行うコミュニケーションは、講演会に行ったとき、先生と名刺交換をし、後日、また講演会に行き、再度、名刺を渡すと、「上田さんでしょ?覚えていますよ」と言っていただけます。その他にも、新聞や雑誌で気になる記事を見つけると、そこに手紙を出してみたり、自分から積極的にコミュニケーションを取ることで、相手も興味を示してくれると思います。
株式会社高齢社 最高顧問:上田研二(創業者)
ユメニティ 代表取締役
1938年生まれ。1956年高校卒業後、東京ガス㈱に検針員として入社。1998年東京ガス㈱を理事まで昇格し定年退職。1991年以降は子会社、協力会社2社の経営再建を果たし2003年に引退。
引退前の2000年に「1人でも多くの高齢者に働く場と生きがいを提供したい」との理念実現を目指して㈱高齢社設立。
2010年、㈱高齢社代表取締役会長に就任する。この間、高年齢者雇用開発協会会長賞授賞、高齢・障害者雇用支援機構のモデル企業に認定。テレビ東京系「カンブリア宮殿」「ガイアの夜明け」、日経ビジネス、NHKラジオ深夜便等、様々なメディアに紹介される。2012年「一般社団法人高齢者活躍支援協議会」の理事長就任。
株式会社高齢社
http://www.koureisha.co.jp/